スリッパで石を踏み抜いた。
仕事場の駐車場は砂利と時々大きな石ころが散らばっていて、僕は仕事終わり頃に横着してスリッパのまま車まで向かっていた。
確か職場に置いていこうと思っていた忘れ物を取りに行くつもりだった。
鋭い感触が足裏から全身に走るまでは一瞬だった。柔らかいスリッパを履いてきた僕を諌めるように、とりわけ大きめな石が僕の左足の母趾球にめり込んだ。
大きな声が出た。周囲に誰もいなくてよかった。
帰り道は下を点検しながらの帰り道となった。頭の片隅で井上陽水が上を向いて歩こうと歌っていたが、足元が悪いと涙をこぼさないようにすることも許されないのかと思った。